■土岐 17:00
 国道19号線は、アップダウンの多いコースだ。以前にレンタカー屋で借りたヴィッツを駆ってこのコースを走った事があるが、車で走るのと自転車で走るのではまるっきり意味合いが違う。1年と少し前の話のはずなのだが、道の印象も全然違って見える。ただし、起点・名古屋から終点・長野へと向かう「下り」とは違い、今回は名古屋に向かってこの道を走る「上り」である。道路用語(?)の上り下りとは真逆になるが、この向きで走っていくと、アップダウンは繰り返しながらも全体としては長い下り坂のコースとなるはずだ。

 「Qoo さわやかりんご」によるセリヌンティウス効果はうっすらとながら長々持続していた。自転車乗り捨て予定駅だった瑞浪を通り越しても猶余力があったため、瑞浪市内を走り抜けて土岐市に入ってしまったほどである。しかも、一度はあれだけ消耗しておきながら時速換算で20kmオーバーというペースを維持しながらの移動である。区間記録に関して言えば、10km進むのに要した時間が20分ほどだったこともあった。大抵は下り坂が絡むので、体力的な消耗も少なかった。冷静になってマラソンの国際大会のことを考えれば大したことのない数字とも言えるのだが、あまり無茶なスピードを出すと自転車の方が悲鳴を上げる。整備されたリンクならともかく、段差の多い市街地であまりにもハイスピードを出すと、タイヤがいかれてしまうのは時間の問題だ。今ここでパンクなどと言うことになってくると、かなり厄介だ。地理不案内、修理して再スタートをきるまでには膨大な時間をロスする事が予想される。そんなリスクを犯すぐらいなら、身の丈にあったスピードで安全運転を続けた方が、結果的には目的地に早く着ける。遠出長丁場の場合、このことは常に意識しておく必要がある。急がば回れとはこの場合、真理なのである。

 19号線は幹線道路だ。ここを走っていると道沿いの主要都市までの距離を表示した看板が何度となく目に付く。それでなくともこの道沿いには100m刻みで「名古屋まで○km」と表示されたキロポストが立っている。これはあくまで現在地から熱田神宮までの距離を表示したものなのだが、頭の中に入っている名古屋の市街図から考えるに、現在地から自宅までの距離は、終点まで走った場合の距離とほぼイコールになりそうな気がする。ともかくこのキロポストを目安に自分の移動速度を算出、それで残りの距離を割り算して帰宅予想時間を割り出すと言う行為を幾度となく繰り返した。土岐から名古屋までは30〜40km程ある。現在のペースで普通に走り続ければ、計算上はあと2時間あまり、19時を回った頃に家に帰り着くということになる。

 しかし、ことはそれほど単純ではない。土岐市を抜けるとこの先は多治見市。そこまでは良い。そして多治見のさらに向こうは春日井市で愛知県に入ることになるのだが、問題は多治見市春日井市境は峠道になっているということだ。内津峠である。まっすぐ走り続ければ、ここが文字通り今回最大の山場になるはずである。19号線に乗ってからこっち、細かい上り坂はかなり越えてきたが、それらとは根本的にレベルが違う長い坂道となっているはずである。以前に19号線を走ったときも確かに越えた峠なのだが、名古屋を出ていくらも行かないうちに迎えた峠で、気持ちもこれからの旅路に高揚していたたし、何より車での峠越えだったため、具体的にはどの程度の峠だったか、あまりクリアには記憶の中に残っていなかった。

 さて、どうするか。コンビニで水分補給をしたついでに、今後どのようなルートで走っていくべきか、検討することにした。回避ルートはある。

 まず、多治見市内で国道248号線に入り、瀬戸市側に入るコース。瀬戸でさらに363号に乗り換え、東名阪道まで走る。東名阪まで出ればあとは見知った道なので地図もなしで走れるのだが、そこまではまったく未知なのが問題だ。地図があるとは言ってもあくまで自動車ドライブ用のものである。基本的にサイクリングには不向きで、まして日も落ちるこれからの時間帯にそういうルートを選ぶのにはちょっとした勇気が要求される。あるいはそれは、蛮勇なのかも知れない。

 第二案。中央線沿いに進むルート。古虎渓を抜け、東谷山まで進む。一度走ったことのある道で、特に東谷山から先はかなりはっきりと土地鑑がある。ただし、道が狭いはずだ。交通量は多く、歩道はない。路側帯も狭かった記憶がある。暗い中、自転車で走るのはかなりの危険が伴う。

 上二案とも、内津峠越えよりは緩やかな坂道を越えるだけで済むような気はするのだが、確証はない。あえて火中の栗を拾うような真似をするべきか、それとも…。

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