空飛ぶ鉄塊

Centrair

 私は飛行機が嫌いだ。子供のおもちゃではあるまいし、あんな巨大な金属の塊がちょっと羽根をつけたからと言ってそう易々と飛ぶ筈がない。どうにか飛んだとしても、ちょっと失速すれば真っ逆さまに地面に叩きつけられる甚だ頼りない乗り物だ。旅客機事故ともなれば一度に数百人が死亡する事も珍しくない。以前、御巣鷹山に墜落したJAL123便の事故について検死官の立場から記録した「墜落遺体」と言う本を読んだことがあるが、その内容は酸鼻を極めた。あの本を読めば誰だって飛行機に乗る事について一抹の不安を覚えるようになるだろう。

 そんな調子だから、私は滅多な事では海外旅行に行かない。過去には一度日本を出た事もあるが、次に国外へと旅立つのは何十年か先の話になると思っていた。ところがそんな思惑とは裏腹に、海外旅行をしなければならない事になったのは2006年末のことである。行き先は香港、そしてマカオ(澳門)。いかにも旅行会社が用意したパッケージツアーっぽいセレクトだが、ズバリその通りである。今回私の役割はあくまで供回りなので、自分の懐は一切傷まず、従って行き先についてとやかく言える身分でもないのでこのようにメジャーな旅行地へと出かける事になった。

 一つ気がかりだったのは香港の空港事情で、私の知る限り香港発着の飛行機はビルの屋上すれすれのところをかすめながら空港に離着陸するはずである。よりによってそんな事故率の高そうな空港を使う羽目になるのかと気が重くなったものの、どうも今回の旅の主要目的地はマカオらしい。飛行機も珍市名がらみで物議をかもした中部国際空港セントレアからマカオ空港に向けて飛ぶようだ。ただし、本来なら名古屋‐マカオ間には直行便が存在しないので、旅行会社が飛行機を丸丸一機チャーターして、参加者を募ってマカオへ向かおうと言うのが今回のツアーの趣向らしい。

 この種のチャーター便というのは、常に空港を利用している定期便に迷惑をかけないように飛ばなければならないので発着はどうしても深夜になる傾向があるらしい。今回のマカオ行きもその例に漏れず、2006年12月30日の22時を回ったタイミングでセントレアを発つことになっていた。空港島に渡るのは夕方から夜にかけてのことになる。

 常滑市沖の伊勢湾に浮かぶ人造島に乗っかっているこの空港は、開港してすぐに天候の脅威に対して脆い事が露見している。吹きっさらしの強風で飛行機が離着陸できなくなった事もあったし、今回の旅の前日にも雪により一部の便で欠航が出たようだ。強風にしろ雪害にしろ、陸地部ではどうと言う事のないレベルでしかなかった事を思えば、この空港の置かれた特殊な環境がわかると言うものだ。私が乗るはずの便も欠航となるのではないかと思っていたが、一日明けてみれば特にフライトの支障となるような因子は無かった。

 気象問題の他にセントレア開港直後によく取り沙汰された話題として、空港内施設の異常な充実度が上げられる。高山ラーメンの老舗・豆天狗や巨大エビフライで知られるまるは食堂があったりと、レストランの類が充実しているのはもとより、日本の古い町並みをイメージした専門店街があり、空港に出入する飛行機を見ながら浸かれる風呂などもある。これは、コンセプトとして飛行機に乗らなくても出かける価値のある空港を目指した結果だと言われている。空港近くで最大のマーケットである名古屋市からは微妙な距離感があり、単純なレジャースポットとしては少々利用しづらい感あるセントレアだが、何かと待ち時間が多い飛行機の利用者にとって都合が良い施設であるのは間違いなさそうだ。私は旅立ちの前、夕食に豆天狗でラーメンを食べたかったのだけれど、これから行く先が中国圏だという理由でラーメン案は却下され、日本としばしの別れを惜しんで回るお寿司を食べる事になった。

 セントレアのイメージキャラクターである謎の旅人・フーの様子をうかがっていたりしたらフライトの時間となった。登場を待つ待合所のテレビではレコ大が放送されている。エビちゃんが新人賞受賞者発表という大任を果たし、押ちゃんも頑張っているのに勇気付けられながら、デッキへと向かう。2006年の新人賞は何とかいう女性アーティストのようだが、大賞が誰だったのかは未だに知らない。




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