HONG KONG POWER TOWN

Wong Tai Sin (Hong Kong)

 香港に渡って最初にした事は、昼食をとる事だった。昼なのでそんなに重いものではなく、ということで飲茶を食べる段取りになっていたのだけれど、これが曲者でとんでもない量が出てくる。春巻きを皮切りに、蜜で味付けした甘いチャーシューが入った豚饅、香りの強い香草が入った餃子や肉団子、エビシュウマイ、チンゲン菜を煮たもの、太麺の焼きそば、チャーハン、具をつめた餅、エッグタルト等々、バラエティーに富んだ品々が、一品あたり結構な量で出てくるので、とても食べきれたものではない。それでいて気に入った品はお代わり自由のシステムになっているのだから驚きだ。味の方も、まずくはないのだけれど日本人になじみのない味であるのも事実。飲茶と言われて桃饅とかゴマ団子とかかわいらしいものを想像していたので完全に虚を突かれた形だ。出されたものを全て食べつくさないのが中華料理のマナーという事だが、それでも出されたものは全て食べないと気が済まず、なんとか完食を目指した。さもしいようだが、前日に「火垂の墓」のドラマが再放送されており、飢えの中さびしく死んでいった清太・節子兄弟の姿を目の当たりにして涙していたので、どうしても食べ残すのには抵抗があったのだ。文字通り、後味が悪い。結局出された料理全部を食べる事はできなかった。

 パンパンになった腹で向かったのは、レストラン近くにあった香港歴史博物館。エントランスホールに大きな孫中山先生の胸像があるのがいかにも香港らしい。日本で言うところの孫文である。

 どうやらアヘン戦争以前の香港は人家もまばらな片田舎だったとの事で、このツアーではアヘン戦争後100年の香港の歴史を展示したブースを駆け抜けて終わった。建物自体は大きいので、別の場所にはサルだのトラだのがいるン万年前の香港の様子も再現されているようだが、この辺になってくると歴史博物館というより自然史博物館である。ちなみに現在の大きな建物はごくごく近年になって建設されたものらしく、それ以前は香港の歴史の浅さを反映した、わずかばかりの展示品があるだけの簡素な博物館だったのだそうな。

 次いで向かったのが嗇色園(シックシックユン)黄大仙(ウォンタイシン)寺院である。孔子などが祭られており、香港でもっとも人気のある道教寺院という事だが、前述の通り香港そのものの歴史が浅いため、寺の由緒もそれに準ずる。立地は超高層ビルの谷間で、線香の煙が濛々と立ち込める寺院の背景に巨大なビルが屹立する光景もまた香港チックと言える。寺院の境内には各種占いの出来る先生が何十人が入った雑居ビルのような建物もあるが、真の実力者は一握りで、後は詐話師まがいの連中もいるとは地元ガイド氏の言。

 黄大仙で一つ印象的だったのが、入り口付近で中国共産党に対する抗議活動を行う法輪功の会員だった。中共は中国人の生活文化に密着した道教以外のオカルトの類を淫祀邪教として扱っており、中国本体での法輪功は人心を惑わす邪教として徹底的な弾圧を受けている。それを避けて法輪功会員は香港へ逃げ込んできているのだ。日本人観光客に向けても「素晴らしい教えです」と勧誘活動を行う傍ら、中国当局から拷問を受けた仲間の写真(いわゆる「グロ画像」の類である)を方々に掲示し、中共の非道を観光客に向け、世界へと発信している。ニュースとしては見聞きしていた情報だが、いざこうして目の当たりにするとかなり衝撃的だ。

 黄大仙を後にし、バスで次の目的地へと移動する。ここで二つ、ガイドさんから残念な情報を聞かされた。一つ、ビルの谷間の空港と呼ばれた香港国際空港は返還に際して役目を終え、現在は公園となっていること。空港に絡んだビルの高さ制限がなくなったことで、空港周辺部のビルの高層化は文字通り天井知らずになりつつあるという。二つ、香港の有名な観光スポットの一つだったタイガーバームガーデンは現在無くなっていること。特にタイガーバームガーデンの消滅は痛い。ずっと昔、「ジョジョの奇妙な冒険」の中でポルナレフとアブドゥルがこの庭園を舞台にして戦っているのを見て以来、香港に行くことがあったらぜひタイガーバームガーデンを訪ねようと思っていたのに!

 タイガーバームガーデンは、「ジョジョ」作中ではこのように紹介されている。「信じられない光景だが、タイガーバームガーデンは香港島のタイハンロード山腹斜面に実在する庭園である。薬 萬金油(タイガーバーム)で億万長者になった胡文虎(アウブンホウ)という人が1935年につくったもので、ギンギンの色彩で彫刻された不思議な動物たち、そのセンスと世界観は香港奇妙ゾーンナンバーワンである(3:00AM〜4:00PM 入場無料 年中無休)」。

 何でも、創業者の娘にあたる人が大変優秀な人で、親の遺産を元に多角経営に乗り出して一時は成功していたのだけれど、やはり過ぎた多角化が会社の業績を圧迫し、ついには本業の製薬業までも破産状態、彼女は行方をくらまし、タイガーバームガーデンは失われたとのことである。ガイドさんの話では、その後サルだのウマだのをトレードマークにした似非タイガーバームが香港の薬市場に大量に出回ったらしい。しかし香港市民に愛された本家タイガーバームだけはどうにか息を永らえたらしく、現在でもトラのマークは安心と信頼の証になっているとの事である。ともあれ私の中の香港のイメージと言えば、ビルすれすれを飛ぶ飛行機、タイガーバームガーデン、サイコガンダムだったのにその内の二つまでが現在は既に失われているということになるのだ。サイコガンダム実現の可能性が途方も無く低い事を考えれば、私の中の香港像は砂漠の逃げ水のように霧散して行ったも同然である。

 ところでこのガイドさんは結構興味深い話をする。鉄観音やウーロン茶、プーアル茶など日本でも馴染み深い中国茶と酒の組み合わせによって様々な薬効が得られると言う話(残念ながら具体的なバリエーションは忘れてしまった)や香港人は窓からゴミを捨てる習慣があると言う話が印象深い。どうも結構大きなゴミも捨てるようだ。夫婦喧嘩で要らなくなった奥さんを窓から捨てたとか何とか(これはさすがに殺人事件扱いにされたとの事)。彼らが住むマンションの高度を考えるとおちおち歩道も歩いていられないような気がする。まあひょっとすると香港ジョークだったのかもしれないけれど。




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