エキゾチック・ジャパン

 とかく小さな島国だといわれがちな日本だが、どうしてどうして一個人がその隅々までを移動して回るには十分すぎるほどに広い。その個人の限られた知見の中で日本各地の人情風土を語ろうとすると、どうしてもどこかにひずみを生じるに違いない。

 私たちは時に、「なんだかもっともらしいけど、本当にホントなの?」と疑ってかかりたくなる御当地事情話に出くわす事も珍しくない。夕庵ブログでも長崎の皿うどんに関する話を紹介した事があったが、ここではその再掲と共に、真偽の定かではない同種の御当地珍事情を紹介してみる。ここで紹介する話が事実であるとは限らないが、少なくともこれらの話には、土地の現実を知らない他所の人をして「ああ、やっぱりそういう土地柄なんだ」と納得させしめるだけの力が備わっていることは間違いない。

 あなたのお国は、他所の人からこんな風に思われているんですよ。

■知られざる御当地事情1【長崎皿うどん編】
 長崎の食べ物屋では、普通に焼きそばを頼むと堅焼きそばが出てくる。

 長崎の皿うどんは、要するに堅焼きそばのことだ。こう言ってしまうとありがたみも何もあったものではないが、皿うどんに格別の思い入れのない人間に言わせるとそうなってしまう。だからこそこういう話が出てくるのだろう。いやまあ、本当の話なのかもしれないけれど。もっとも、学生時代に付き合いのあった長崎出身の子の様子から察すると、長崎名物の皿うどんと普通の堅焼きそばを混同することは無さそうな気もする。

■知られざる御当地事情2【広島焼き編】
 広島でお好み焼きの事を「広島焼き」と言うと、土地の人からは決して良い顔はされない。特に年配の人からの受けはすこぶる悪い。「広島焼き」という言い方が原爆の惨禍を連想させるからだ。

 最近ではお好み焼きに大阪スタイルと広島スタイルがあるのはよく知られるようになったが、一般にお好み焼きといえば大阪風の事を指す場合が多い。広島の人には申し訳ないが、そういうものだから仕方がない。両者を区別する場合、「大阪風お好み焼き」・「広島風お好み焼き」と呼び分けるか、広島風を「広島焼き」と呼ぶ事もある。もちろん広島の人が広島スタイルのお好み焼きを「広島風」だの「広島焼き」だのとまどろっこしく呼ぶことはないだろう。広島のお好み焼き屋で「広島風!」などと謳っているところを見たこともない。逆に大阪風のお好み焼きを「大阪焼き」と呼ぶなどと聞いた事もある。そこまでは分かるのだが、「広島焼きが原爆を連想させるからNG」ということはあるのかどうか。もちろん面白半分で茶化して良いような話ではないが、平和都市として原爆の惨禍に真正面から向き合っている広島にとって、「広島焼き」はそこまでナイーブな話題なのだろうか。実際に被爆体験のある人ならばあるいはという気もするが…。

■知られざる御当地事情3【京都ぶぶ漬け編】
 京都において訪問先でお茶漬けを出された場合、暗に「早く帰りなはれ」と言われている。

 結構有名な話で、ずいぶん前に掲示板で話題になったこともある。その時の流れでは、「最近ではそういうことはないのではないか」という意見が優勢だったような気がする。ただし、伝統や格式を重んじる古くてディープな京都ならばその限りではなさそうな雰囲気も残されていた。

 地方出身者はおろか御近所にさえも本音を見せないというのが伝統的京都人評で、それが正しければぶぶ漬け(お茶漬け)伝説の真実などそう簡単には表面化しては来るまい。特にディープ京都に残された風習だとしたらなおさらである。

 なんだか食べ物ネタばかり続いているが、別に今回がそういう特集だと言うわけではない。

■知られざる御当地事情4【会津戊辰戦争遺恨編】
 会津の人は長州人(山口県民)を蛇蝎のごとく忌み嫌っている。戊辰戦争のときの遺恨があるからだ。

 これは昔から言われている話だ。昔から言われているから信用するに値する話だとは限らないが、実際今から20年ほど前の1986年に山口県萩市が会津若松市に向けて、「もう120年も経ったのだから」と和解及び友好都市関係の締結を申し入れたところ、「まだ120年しか経っていない」と断られたという(Wikipediaより)。さすがに若い人の間では戊辰戦争だ白虎隊だでもないようだが、高齢の人の中にはまだ会津戦争のことを恨みに思う向きもあるらしい。そうした年配者は年々少なくなっていく現実があるのだが、私事ながらうちのジイサマが満蒙開拓団で痛い目に遭わされたことについて今も国に対して不満を持っていることを考えれば、恨み持つ高齢者はまだまだ相当数いるのかもしれない。「孫・ひ孫が長州人と結婚する」と言って親族内で騒ぎになると言うことも考えられなくもない。

 ちなみに会津から恨まれる側の山口にも会津から恨まれているという自覚はあるらしく(?)、Chakuwikiの山口ページには、ネタか事実か「会津人が商談をしてて、相手が山口県民と分かると、それだけで商談が破談する」、「会津には、山口県出身だと泊めてくれない旅館が存在する」、「福島県知事選で自民党が敗退したのは、山口県出身である安倍が首相だから」などという思わず笑ってしまうような項目が存在する。Chakuwiki自体がネタサイトみたいなものだから当然か。

 とまあ、甚だ取り留めのない形になってしまったが、今回はこんなところで。真相については、知らぬが華というような気もするので敢えて詮索しようとは思わない。日本各地を旅して回ればいつか自然に事実が分かる日が来るかも知れない。それまで、ただ待つのみだ。
























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