青木まり子さんのこと

 以前読んだ「AERA」の記事に、「本屋に行くとトイレに行きたくなる」というのがあった。早い話が「都市伝説探偵団」のネタだった。これを都市伝説というのかどうかは意見の分かれるところだが、結局は似たようなものだと認識する人も多かろう。件の記事はこれ以上何を補足する必要があるかと言うほどストレートな表題を掲げていたが、本屋で大便をしたくなる人は多いのだそうな。

 これはそれほど新しい話でもない。10年ぐらい前のウッチャンナンチャンの番組の中で取り上げられていた記憶があるが、その段階にして好事家の間では本屋と便意を結びつけて考える人たちが存在する事が知られていた。

 「AERA」によると最初にこの話が世に出るきっかけになったのは、1985年に「青木まり子」なる女性が雑誌「本の雑誌」に向けて「本屋に行くと大便をしたくなることありませんか?」というような投稿をしたことらしい。どうも少なくない同調者がいたようだ。「本の雑誌」では当時、14ページも及ぶ特集を組んだのだそうだ。そして、この問題に先鞭をつけた女史の名前を頂いて「青木まり子現象」などと呼ぶようになった。失礼ながら熟考熟慮の末に出てきた命名とも思えず、発端となった「本の雑誌」誌自身もこの話がこれほど息を永らえる事になろうとは思っていなかったようだ。

 さてこの現象、「本屋」「書店」「大便」「便意」辺りを適当に組み合わせてググって見ると、実体験として記憶している人もかなり多いようだ。ただし、私には関係のないことだと思っていた。実際私は本屋に行って大便をしたくなるということもない。しかし、最近気が付いたのだが、どうも私の場合図書館に行ったときに用足しに行く事が多いようだ。それは気のせいなどというレベルではなく、有意に多い。これまでは、1時間から自転車をこいで図書館までたどり着くとまずコーヒーを煽り、しかる後に本を読んだり勉強をしたりする習慣のせいだろうと思っていた。便秘には水分の摂取と運動が肝心だというではないが。私の場合、厳密には便秘ではないのだけれど、そうした行動パターンが排泄と密接に結びついていると考えても差し支えはなさそうだ。もっとも、普段の通勤でも同じような事をしている割に、仕事中にトイレへ立たなければならなくなることは少ない。そう考えると、本と便意の間に何かしらの相関があるような気もしてくる。

 仮にそういうものがあるとして、それなら青木まり子現象の正体はいったい何なのか。「AERA」はいくつかの仮説を紹介している。曰く「インクのにおいが便意を誘う」、「トイレの無いことも珍しくない書店にいる精神的プレッシャーが影響している」、それとは逆に「書店にいることで精神がリラックスし、開放的になる事で催してくる」という説もあれば、「本を読む姿勢が胃腸の働きを支配する副交感神経をオンにする」などという専門的なものまで諸説紛々。どの程度真剣に研究されている話なのかは定かではないが、比較的有力視されているのは最後の「副交感神経云々」の説らしい。確かに、反例が思い浮かぶのは副交感神経の話以外である。もっとも、交感神経だ副交感神経だのオンオフなど門外漢の私が与り知る話ではない。

 そんな下世話な青木まり子現象だが、これもどうやら時々はマスコミなどの注目を浴びる反復性のある話のようなので、現象の真相を解明する動きも含め、今後しばらくは命脈を保つ事になるだろう。なお、「AERA」によれば青木まり子さんは青木さんと結婚したので未だに青木まり子さんなのだとか何とか。

 ちなみに私の場合、もやしを大量に食べるとお通じが良くなる。もやしは、良い。























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