就職の重さ

 最近少し気になっていることがある。「吹上ホール」などとえらくローカルな地名が出ているのでたぶん東海地区限定の話だろうが、リクルート就職フェアのCMでティーカップがぐるぐる回っている裏で、ちょっとアンニュイな曲調の歌が流れている。あれ歌っているのはビリーバンバンなのだろうか。似ているような、全くの別物のような、本当のところが分からない妙なもどかしさがある。当方、ムード歌謡チックなものを耳にすると、大半がビリーバンバンのものに聞こえてしまう。

 就職活動などというものを行ったのはもう結構昔の話になってしまった。自分と縁遠い話になってしまったので就職関連のうわさと言うものにもほとんど興味がなくなってしまった。まあ、今後再び就職活動をする可能性も十分にあるのだけれど、かつて「就職試験に関する都市伝説」として例示した話の数々は、今にして思えばまるっきり子供騙しである。まさに学生のうわさとするに相応しい。人事に関する諸々は、いざ就職してみても不透明なところが多く、そういう意味では「男は黙ってサッポロビール」の話だとか「チョコレートは森永」の話も試験担当者の裁量次第でどうにかなるかもしれないのだが、結局はなさそうでありそうでやっぱりない話のような気がする。

 ところで、最近もこの種の就職伝説は増産され続けているのだろうか。気になるところである。私が最初に就職活動をしていた頃と言うのは、例の「就職超氷河期」真っ只中だったので、大学を卒業しても就職先が決まっていない学生も珍しくなかった。ニートやフリーターが大量生産されたのもこの時期だったと言われる。それだけに就職に対する切実さは大変なものがあり、まさしく藁にもすがる気持ちで怪しげな就職伝説を頼ってもみたくなるような空気があったのだが、聞くところによればここのところ就職戦線は大変な売り手市場なのだそうだ。何でもバブル期並みの水準らしい。バブル期の就職活動がどうだったのかなど私は知らないが、鴻毛のように軽いものだったようだ。いわゆる都市伝説の類ではないが、白水社の「日本の現代伝説」シリーズには、売り手市場をいいことに好き放題を通した学生が、最後に企業の採用担当者にやり込められる話も収録されていた記憶がある。もしかして、ああいった感じなのだろうか。

 そこで気にかかるのは、そういう就職に対する厳粛さが失われた状況下、あそこで紹介したような話が生まれてくるのかどうかである。あれらの話は、言ってみれば極限状況下で生まれてくる悲喜劇である。極限状況でなければ、追い詰められた人たちの突拍子もない行動の顛末など語られるはずもない。軽い気持ちで就職先を選べるのなら、就職活動に関する情報の重要度も低下するし、そうなれば数々の就職活動伝説は情報としての価値さえ失ってしまう。

 ちょっと気になったので今まさに就職活動を開始しようとしている知り合いの大学生に聞いてみたのだが、そういったネタ話の類は聞いたこともないという。まあ、地元ではお嬢様学校で通っている大学の学生だし、それこそ就職も腰掛ぐらいにしか考えていない節があるので子供騙しの就職伝説に興味がなかったとしても無理もないような気はする。それにしても、いったんは社会人を経験した人間の間でささやかれる転職伝説のようなものがないのは、やはり社会人経験者が転職の裏も表も知ってしまったために怪しげな与太話の育まれる環境が失われているということなのだろうか。

 ちなみにこの記事はブログ用に下書き程度まで進めていたものが、掲載時機を逸してしまっていたので廃物利用したもの。内容も構成もいい加減なのはそういった事情があるのでご了承いただきたく。
























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