剣が峰

 かつて岩剣城の築かれた剱ノ岡は、姶良の街外れにある。このあたりは、国道沿線を除けば近年になっても都市化が進んでいないらしく、どちらかと言えば牧歌的な雰囲気の残る地域だ。農村地帯、と言うよりは古くからそれなりの規模の集落が存在していて、そこが大規模な再開発の波に現れていないような感じである。

 岩剣城への取っ付きには岩剣神社がある。この神社以外に目標物となるものはこれと言ってないので、とにかくここまでたどり着くことが岩剣攻略の第一歩となる。幸いにして、神社そのものは比較的スムーズに見つけられた。思いのほかの荒天になったこともあって、当初予想していたよりは時間を取られたものの、迷子になるようなこともなかった。この先もこの調子で行ける事を願いながら、登城路を目指す。岩剣神社の左手後方に延びる舗装道路が、すべての始まりだ。決して広い道ではないので対向車との離合は難しそうだが、ほとんど車の行き来は無さそうな道だ。これならやはりレンタカーでここまでやって来たほうが良かっただろうか。

 10分ほども登っていくと、路傍に「岩剣城跡」と書かれた白い標柱が立っていた。少々意外な気がした。実を言えば、岩剣城に関しては攻略のために藪こぎも辞さず、またルートファインディングにも挑む覚悟でいたのだが、思ったよりまともな登城口だと感じた。あまり整備状態は良くなさそうだが、一応石段も存在している。

 それでも一応身構えながら、山頂の方を目指す。いくらも行かぬうちに石段の荒廃が始まったが、道が消滅していると言うようなことはない。雨が降っているためか、道中に小さな沢が生まれていたのを飛び越えたが、山の規模からして普段から水の流れがあるとも思えない。そして、山頂が近付くにつれて、道は岩だらけになって行く。岩の形から見て、石垣が崩落したものなのかもしれないし、もともと岩盤の露出している山なので単に自然石なのかもしれない。斜面の崩落を防ぐために植えられたものなのか、周囲には竹林が広がっているのだが、手入れが行き届いていないのか、倒竹も多い。登城路としてはあまり整備されていない印象だが、山頂近くの急坂には、体重を預けるためのロープが張られていたりして、全く打ち捨てられている雰囲気でもない。

 それでも、いつ何時絶望的な悪路に出くわすか分からないと身構えながら進んだのだが、結局、標柱のあたりから10分ほど登ったところで山頂主郭部に到達。削平の痕跡、すなはち曲輪の跡はあるが、城址碑の類は建っていない。何しろマイナーな城跡である。現存する遺構はこんなところだろう。むしろ尾根筋の一部に石垣が残っていたのが意外なほどだった。まあ岩剣城に関しては、ネットを見渡しても城の現況に関する情報が不足しており、それを自分で見聞して補うことにこそ意味があったので、登頂にさえ成功すればそれで十分である。






九州山地を越え TOP 鹿児島も今日は雨だった








100MB無料ホームページ可愛いサーバロリポップClick Here!