博多の夜

 始まりの熊本からこっち、鄙びたところを走る時間の長かった九州旅行だが、北九州を過ぎてからは俄然様子が変わって来た。窓から見える風景は明らかに人口稠密地帯のそれだし、スペースワールドなどとハイカラな名前の駅も目に付くようになった。北九州から少し離れると、いったん沿線の都市化は収まったかに見えたが、福岡市が近づくに連れて、再び車窓には大都市近郊の風景が戻ってきた。

 福岡市。人口140万人以上を数える九州最大の都市。その玄関口となるのは博多駅で、ここはすなはち九州の玄関口でもある。博多駅からは九州各地へと域内交通が延伸しており、事実、過去の九州旅行では必ずここを通っている。普段なら始まりの場所にして終りの場所となるところだが、今回はスタート地点が熊本だったため、実質的ゴールに位置づけられる。とうとうここまでやって来た。明日はこの駅からのぞみで発つことになるが、今晩はとりあえず同じ街の片隅で眠ることになる。

 折に触れ、今回の旅との対比に持ち出した過去の開聞旅行の際は、実を言うと博多には泊っていない。開聞の時はムーンライト九州で夜に博多駅を出たのであって、福岡泊りを経験したのは、旅行記として残さなかった長崎旅行の時の話である。歓楽街として名高い、中州の近くにあるサウナ・ウェルビーに泊った。名古屋栄にも系列店があるが、別に全国的に展開しているチェーンではなさそうで、福岡にこの店があるのはたまたまというべきか。ちなみに長崎行きのとき、夕食はキャナルシティのラーメンスタジアムで食べた。従って、今回もその作戦で行くのが良いだろうか。

 ここまで長い旅路だった。やはり疲れはたまっている。腹も減っている。小洒落た店で食事をという思いもあったが、結局「早く腹を満たしたい」という誘惑には勝てず、博多駅の地下にあった名代ラーメンでとんこつラーメンを食べた。この店は、店の構えも出てくるラーメンも、良くも悪くも今風ではなく、格別はやっているという感じでもないのだが、3年か4年前になる開聞行きのときにも営業していたし、もしかするととんこつラーメンの本場で長らく営業してきた老舗なのかもしれない。この店のラーメンは安価な変わりにボリュームもやや控えめである。もともと替え玉前提のラーメンという感じがしないでもないが、私はまだこの替え玉システムに馴染めないので、どんぶり一杯平らげただけで、食べ足りないまま店を出ることになった。

 その後、ウェルビーの方を目指すことにしたのだが、腹も満ちると今度は疲れがどっと押し寄せてくる。博多の駅前にはちょっと高級そうなカプセルサウナがあり、楽をしようと思えばこちらに泊るのも手ではあるのだが、結局勝手の分かるウェルビーを目指すことに。ウェルビーは傑出した何かのある店舗というわけでもないのだが。

 それにしても中州の辺り、キャナルシティまで歩いてくると、ちょっと小腹が空いてきた。もともと食い足りなかったのもある。ここでまた誘惑に負け、ラーメンスタジアムへ。前回どこで食べたのかは覚えていないが、今回はむらさき食堂に入る。旭川ラーメンにも引かれただが、博多まで来て旭川ラーメンもないだろうという思い直した。しかし、とんこつを繰り返すとさすがにお腹いっぱいになり、飽きが来る。二杯目という不利もあって、むらさき食堂への評価は少々辛いものとなった。

 ラーメンも、一杯では物足りなかったが、二杯食べると体が重くなってくる。いよいよ本格的に歩きたくなくなってしまったので、すぐ近くのウェルビーに転がり込み、その日は眠りについた。






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