城とサンドイッチ

 翌朝。一番列車で目指したのが国東半島の付け根・杵築市に位置する杵築城である。杵築の町は、城下町として知られ、その象徴と言えるのが杵築城なのだけれど、城自体は作り物の模擬天守だ。

 太陽は東から昇って西へ沈む。つまり、東ほど夜明けが早く西ほど遅いと言うことになる。日本の標準時は明石を通る東経135度の経線を基準に統一されているのも周知の事実だが、国土の東西方向への長さは、各地の日の出日の入り時刻に限っては、如実な差を生むものである。折りしも冬至の日。午前6時に杵築駅に到着した際、周囲が真っ暗だったのは当然のことながら、城跡への移動に使用する国東観光の路線バスが駅前にやってきた段でも、周囲は黎明。7時を過ぎて杵築城周辺までたどり着いてさえ、辺りにはまだ暗さが残っていた。名古屋の感覚で言えば、既に昼間に近い明るさの時間帯である。事前に調べていたのとバス路線の経路が変わっていたらしく、城からはかなり離れた場所に降りることになったが、それでも城跡近くまで行くのに要した時間は、周囲が写真撮影に耐える明るさになるまでの時間調整程度の意味はあった。

 さて、そうしてたどり着いた杵築城跡。周囲は城山公園として整備されており、前出模擬天守は資料館となっている。その種の施設の常として、8時以前に訪ねたところで、中に入れないのは当然のこととして受け入れていたのだが、杵築の場合、建物に入れないばかりか主郭への入口に位置する門さえも堅く閉ざされていたため、天守に近づくことすらできなかった。これは予想外だった。城跡は台地上に位置しており、その裾からなら模擬天守も一応は撮影できるため、仕方なくそれで体裁を整え、それで足りない分の埋め合わせは近くの城下町の風景を撮って済ませた。本格的に観光に力を入れている都市に比べれば、この城下町部分もずいぶん今風で、古い趣のある建物群と言うには少々まぶしいところもある。

 この城下町については、現地では日本唯一のサンドイッチ型城下町である、と言うことが謳われている。サンドイッチと城下町と言う二つの単語になんとなく不調和を感じたが、要するに二つの台地の上部に、城下町の名残としての武家屋敷が存在していると言うことのようである。高台に武士階級の住居が固められ、城に通じる道がその両の高所から見下ろされる形となっているのは、城下町そのものを一つの軍事拠点と見なす考えの顕著な表れとして興味深いところではある。

 昼の日中の観光であれば、それなりに見どころも多い杵築の待ちである。うれしのと呼ばれる鯛茶漬けなどの名物もあるが、今日のメインは別府の地獄めぐりだ。杵築の待ちが本格的に動き出すよりも早く、私は別府にとんぼ返りすることになった。






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