最果ての地へ

 18きっぷは、この2泊3日の旅の初日に当たる昨日で使い切ってしまった。そういう意味で、車を使った2日目の能登を中心とした石川県内観光はこのコンテンツの趣旨からは外れるのだけれど、一連の旅の出来事なので引き続きその顛末を記していくことにする。

 普段はあまりしない早起きだが、実は楽しみにしていた今日のドライブを前に、気が高ぶりえらく早朝に目を覚ましてしまった。いつものサウナ泊ならひとっ風呂浴びて時間を潰すところなのだが、安価なビジネスホテルはかえってレクリエーションが少ない。部屋でボーっとしているのも何なので、とぼとぼと歩きながら金沢駅を目指す。大学時代を過ごした金沢、その後も2度ほど訪ねてきたことがあるが、そのたび変わったような、変わっていないような、はっきりしない感想を持っているような気がする。片町から香林坊、武蔵が辻と金沢市内の目抜き通りを通った。長町の武家屋敷の方が観光地らしいのだが、かつて暮らした街の懐かしさがあり、市民の生活になじみの深いルートを選んでしまった。

 レンタカーショップは多くの場合、駅の近くに店を構えていることが多く、金沢もその例に漏れない。特に西口側には何店舗かある。その中でも今日は、トヨタレンタリースで車を借りることにした。ここしばらく車に乗っていない。大事を取ってというほどでもないが、乗り慣れたトヨタ系の車を選ぶことで、運転時の負担を多少でも軽減しようと言う腹積もりである。もっとも、ここのトヨタレンタは営業開始時刻が8時である。それ自体は名古屋の同系列店舗にも言えることなのだが、名古屋のそれが実際には8時前に店へ飛び込んでも手続きを行ってくれるのに対し、金沢駅西店は本当に8時を過ぎるまで入口のドアを堅く閉ざしたままであった。8時よりも随分早く店についてしまったためやきもきさせられた。加えてようやく対応に出た店員の態度もあまり洗練されていない。昨日のおやきもそうだったが、田舎のサービス業は商売に切実感がない。それを責めるのは野暮と言うものだが。

 かくて、じれったい思いをしながらもどうにか出発進行。まずは駅から北に向かい、内灘から能登有料道路に入る。しばらく離れていたので忘れていたが、押しなべて金沢は道が狭い。駅西は、古くからの城下町地域に比べればましなのだが、それでもやや余裕のない道のつくりをしている。今回はドライバーとしての長いブランクから復帰して早々の運転なので、いきなり気を使う。こんなことで先々は大丈夫なのか、少々心配になってきた。

 能登有料道路は、金沢市と鳳至郡穴水町(ふげしぐんあなみずまち)とを結ぶ全長約83kmの有料道路である。位置づけとしては高速道路ではないのだけれど、道中に信号がないため所要時間の計算をしやすい。代わりに何箇所かの料金所でちまちまと通行料を払わなければならないのはご愛嬌である。実際のところ、道行く車は高速道路並みのスピードを出しているので、現実的には高速道路として機能していると言って良いだろう。加賀地方から能登半島を目指す車の多くはここを利用する。ちなみに、能登半島地区の幹線道路は信号機の存在がごくまれなため、前述の「信号がない」という能登有料の特徴も、さほどのアドバンテージとはならないかもしれない。

 内灘の丘陵地から真正面の日本海へと飛び込んでいくかのような入口付近の車窓風景は壮観でしばらくは日本海を左に見ながら北上していくのだが、羽咋市から先は変化の乏しい内陸部の丘陵地帯を進む。このあたりは道が1車線になったり2車線になったりする。逃げ場がふさがれがちなため、遅い車の後ろに着くのも、せっかちな車に追い立てられるのも、どちらもストレスである。なお、このドライブの時は能登地方に大きな被害を出した能登半島地震から数ヶ月とまだ日が浅く、能登有料が地震によって受けだダメージも修復されていなかった。特に中能登の七尾市以北では道中各所に路面陥没の補修箇所があり、暫定的に設けられたらしい迂回路を走らされる区間が存在した。

 能登有料は、2003年開港の能登空港との絡みからか、近年になって少しばかり延伸された様子である。事前に地図を見て「終点まで走っても大丈夫」と頭の中にインプットしていて、道の続く限り走っていたのだが、気がつけばカーナビ内の自車位置は、道なき山中を表示していた。あいにくと携行したロードマップと頭の中に記憶されている能登道路地図の情報も古くなっていたため、もはや現在自分が走っている位置が分からなくなっていた。こうなると目的地までの道のりはカーナビだけが頼りだ。車は過疎地の能登半島の中でもさらに裏通りに属すであろう賑わいのない山の中を走り続けている。今日最初の目的地は、輪島市の郊外にある白米千枚田である。日本海(地元で言う外浦)側にあるスポットなので、地図が分からなくてもがむしゃらに走って海まで出ればいつかはたどり着ける場所だ。とは言え、やはりよく分からないまま走る道というのは心もとない。






北陸路を行く TOP 棚田のある風景








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