九州新幹線全通初日

 とにかく、リスタート地点となる鳥栖駅まで戻る。ここから選び得る選択肢は、そんなに多くはないのだが、そのいずれを選ぶにせよ、九州北部のハブとなる鳥栖駅までは戻らなければならない。これという考えもまとまらないまま、列車に揺られた。

 JR九州の携帯サイトを開き、列車の運行状況を見る。状況は、3時間ほど前と変わっていない。悪化もしていないが好転もしていない。画面下部には代行バスの運転などがないこと、そして「旅行の計画は中止してください」と言うような勧告が掲示され、最終更新時間として、ついさっきの時刻が表示されている。今回に関して、「待てば海路の日和あり」はなさそうだ。携帯電話の液晶画面に表示された情報を元に、今後の方針を考えなければならない。

 一つ気になっていることがある。有明海沿岸の在来線が軒並み運休になっているのは分かるのだが、新幹線については全く言及されていない。今日は、九州新幹線全通後初の営業日だ。従って、ホームページが新幹線の情報に対応できていないと言う可能性も否定できないではないのだが、九州新幹線そのものがかなり内陸部を走っていることもあるので、津波の脅威も何のそので平常運転している可能性もある。新幹線ならば鹿児島まで行けるのではないか。

 鹿児島行きを中止して、鳥栖から北上、本州まで引き返すと言う案も一瞬頭をよぎったが、今回の旅に限って、ホテルとレンタカーの予約をしてしまっているため、これが無駄になるのも業腹だと言う気持ちがある。状況の劇的な好転は望めそうもないが、ひとまず進めるところまで進んでみようか。半ば捨て鉢な気分で、南へと向かう列車に乗った。と言って、荒尾まで進んだところでどうにもならないのは明らかだ。行ける所まで在来線で進み、少しでも運賃を安く上げ、必要最低限新幹線を使おう。作戦はこれであった。交通新聞社刊の携帯全国時刻表に載っている路線図によれば、在来線で行ける最後の新幹線駅は筑後船小屋駅。聞いたこともない駅だが、この先の鹿児島本線は現在どん詰まりになっているはず。

 鳥栖からその筑後船小屋駅までは、思いのほか短い旅路であった。何にもアクシデントがなければ、単なる通過駅となっていたのだろう。筑後船小屋の駅は、同じ新幹線の駅ということで言えば、長野新幹線の安中榛名駅に近い佇まいを持った、水田地帯の真ん中の何もない駅だった。在来線駅と新幹線駅が一つの建物で接続されていないと言う点は、三河安城駅にも通じる。駅前には、急遽取りやめになったイベント会場の残骸と思しきテントや什器類が残されている。しかし、周辺住民に向けては結構大々的にPRを打っていたのか、肝心なイベントこそ中止となってはいたものの、比較的多くの人が集まっていた。

 新幹線駅舎の中に入ると、自動券売機の前には、多くの人が並んでいる。それほど需要があるのかと訝しく思っていると、イベントの関係者が「入場券で改札内に入ってじっくり見ていく人が多い」と小声で話しているのが聞こえてきた。なるほど、そういうこともあるのかもしれない。ともあれ、長蛇の列に並ぶ気になれなかったので、窓口の方に行き、新幹線ならば鹿児島中央まで行けるかと尋ねたところ、新幹線は問題なく走っているとの答えだった。となれば仕方がない、乗車券+新幹線特急券7000円余りは予想外の痛い出費だが、これで鹿児島までの道が開けたと考え、腹をくくって切符を購入した。

 筑後船小屋駅は、駅としてのごく基本的な機能以外は何もない駅である。待合室と一体型のキヨスクはあるが、飲食店の類はない。自動販売機で缶コーヒーを買ってホームに上がると、やはり存外たくさんの人がいる。が、見るともなしに様子を見ている限り、乗客は十指に足りるほどしかいないと思われた。ちょっと乗客と言う風情ではなさそうな人たちは、列車がホームに入ってくると、めいめいにカメラや携帯を構えて、その雄姿を撮影している。が、小さな筑後船小屋駅は、東海道新幹線や山陽新幹線で言う、こだましか止まらない通過駅らしく、列車の大半は通り過ぎていく。小一時間も待って、ようやくやって来た私の乗り込む列車も、熊本止まりのさくら号だった。見物客たちは、この列車がホームに到着したときも、やはりパシャパシャとその車両を撮影していたが、その車体自体は、これまで九州新幹線の先行開通区間を普通に行きかっていたつばめ号と同じもので、名にし負うツバメのイラストとTSUBAMEのロゴがプリントされていた。逆に東海道・山陽新幹線に乗る機会ばかり多い私にしてみれば、和風の内装も含めてもの珍しい車両なのだけれど、九州の人が有難がるに値するほど珍しいものかは疑問だ。それでも初めてやってきた新幹線と言うことで、地元の人には貴重なのだろうか。

 熊本で乗り換えたさくら号も、やはりつばめと同じ車体を使用したものだった。さくら号らしいさくら号への乗車は、帰路の楽しみとして取っておこう。






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