怪龍との対面

 かいもん山麓ふれあい広場駐車場まで戻り、カーナビに次の目的地である知覧特攻平和会館を入力。途中で池田湖にも立ち寄りたいところなのだが、ナビが推奨するルートは、開聞山麓から西へ移動した枕崎経由の道だった。開聞駅の横を通り過ぎ、国道226号交点ですぐ左折するよう支持されているので、どう考えても池田湖は経由しない。そこで、とりあえず池田湖を行き過ぎるまでは、ナビの言うことは無視することに決めた。国道との交差点を、左折することなく直進。信号待ちの時、「またのお越しをお待ち申し上げます」と言うゲートが目に入った。おそらく反対側には「ようこそ」と書いてあると思うのだが、このゲートはいつも帰りにしか目にしない。そんなことを考えた。

 大した根拠もなく思うのだが、池田湖までは、一本道のはずである。前回は、指宿駅前行きの路線バスに拾われ、私以外に乗客のいない車内で、運転手のおじさんと四方山話した思い出のある道だ。そのときのことが懐かしく思い出される。おじさんの話では、この辺りで「菜の花マラソン」というのが開催されると言う話だったが、なるほど、道すがらには黄色い菜の花の咲く花畑が点在している。南国の菜の花は、正月明けには花をつけていると思われる。その意味では、初春時期にここを通った方が印象深いのかもしれない。おじさん、定年間近の骨休めとして、気楽な路線である開聞‐指宿駅線(仮称)を任されたと言っていたが、もう退職されたのだろうか。

 池田湖はしばしば、先ほど登ってきた開聞岳のカルデラ湖であると言われることがある。どうも俗説に過ぎないようだが、そんな話が出てくるほど距離的に近接しているのも確かで、開聞の山上からは池田湖を見下ろせるし、池田湖畔から望む、その湖面を前景にしてそそり立つ開聞岳の姿もまた良く映える。

 もっとも、私が池田湖に立ち寄ってみようと思った動機はもっと俗なもので、ずばり、イッシーのふるさとを見てみたくなったのである。イッシーは、ネス湖のネッシーにちなんで名づけられた、池田湖に生息する(と言われる)未確認生物であり、国内のUMAとしては屈斜路湖のクッシーと双璧をなすほどの存在なのだが、その目撃の歴史はクッシーより若干古くに始まり、2011年でちょうど50周年になると思われる(目撃例の初出年は、今となっては不確かなようである)。

 もちろん、私の訪問時、イッシーはその雄姿を見せてはくれなかったが、とりあえず湖畔のドライブインに立ち寄り、土産物購入、飲み物補給、ならびにトイレ休憩をとることにした。このドライブインは、イッシー伝説華やかなりし時代に営業を開始したと思われる古めかしい施設だが、店内には池田湖に住むオオウナギが展示されていて、その水槽は正に古色蒼然の風情を漂わせている。湖の周辺で見られるイッシーの像は、昔ながらの首長竜を模した姿になっているのだけれど、もうちょっとアカデミックな研究によれば、その正体も実はこのオオウナギなのではないかと推定されているが、ネッシーにも準えられるウナギとなれば、これは大変食いでがあるだろう。もっとも、オオウナギは普段われわれが食べているウナギよりも味が落ちるらしいとわかり、残念なことである。

 イッシーへの表敬訪問を済ませ、開聞岳登山で消耗した分の英気を養った後は、勇躍知覧を目指す。池田湖北方の山地方向へ進路を取ると、道はぐんぐんと高度を上げていく。この道が、鹿児島県道17号指宿鹿児島インター線。鹿児島にまで通じる主要地方道で、頴娃(えい)から始まる有料部分は、指宿スカイラインとして知られる。今回私が走るのは、その有料区間が始まる頴娃までだが、いかにもスカイラインに接続する道らしく、場所によっては眼下に錦江湾を見下ろす好展望の道だ。視界に入るそこかしこの稜線上には、風力発電に用いられる風車が回転しているのが見える。鹿児島県は、全国でも屈指の風力発電導入率を誇る県だということだ。




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