錦江湾渡海

 事前に行った諸々の下調べの結果から、肝付城着は、16時30分を予定していた。そこから40分ほどをかけて攻略し、後はまっすぐ鹿児島市へ引き返す。20時までに車を返さなければならないが、どうにか間に合うだろうと、そういう読みである。

 ただ、カーナビによれば、肝付城への到着予想時刻は、16時30分どころか18時過ぎになっている。地図を拡大すると、どうやら隼人道路を通るコースを走らせようとしているらしい。桜島フェリーで大隈半島へ向かおうとしている私の目論見とは食い違いがある。

 鹿児島市街と桜島とを結ぶ桜島フェリーは、文字通り桜島島民をはじめとする鹿児島市民の足となっている。これは前回旅行の収穫なのだが、フェリーは15分に1本という路線バス並みの運行間隔で発着しており、さらに海を渡った先の桜島には信号もなく、良く流れる。大隈の南を目指そうという場合には、九州自動車道を使って、錦江湾北側への行ったり来たりで40km近くも迂回するよりは、時間的にも金銭的にも、分がいいはずである。ただし、迂回ということであれば、知覧から肝付城を目指す場合に、そもそも鹿児島市街まで北上するのも迂回には違いない。調べた範囲では、阪急フェリーならぬ「南九フェリー」という予約制のフェリーが、枕崎市と大隈半島の間で就航しているようだったが、各立ち寄り先でどの程度の時間を費やすかもはっきりしない旅程の中で、定時に予約を入れてしまわなければならないところに取り回しの悪さを感じたため、利用を見送っている。

 ともあれ、実際に桜島フェリーで桜島に渡ってしまって、その時点でナビの表示する大幅に到着時刻が早まれば良しなのだが、それにしてもフェリールートと九州自動車道ルートで二時間もの差が出るとは思えない。もしかすると、肝付は私が考えているよりもずっと遠いのか?今にして思えば、ナビの設定が初期状態では「一般道優先」になっていて、高速ならぬ国道10号経由になっていたのかもしれないし、そもそもフェリーという特殊な経路を採用する思考ルーチンがナビのプログラム存在していなかった可能性もあるのだが、その時の私は心中にいやな予感を抱えながら、車を走らせていた。展開次第では肝付城を切る事になるかもしれない。

 まずいことに、カーナビはこの先の道路の渋滞を告げ始め、事実鹿児島の市街地に入ったところで、車の流れは決定的に悪くなった。結局、フェリー乗り場にまでたどり着けたのは15時半過ぎのこと。とりあえず船内に車をもぐり込ませたが、これで桜島に渡って、さらに肝付まで移動し、そこから20時までに鹿児島へ戻ろうというのは厳しいか。海を渡る間、甲板に出て、いくらかは冷たさの残る海風に吹かれながら、考えた。結局、肝付城は諦め、桜島一周ドライブをして引き返すことにした。肝付は、まだ未訪の地が多く、遠からず「決戦」を挑むことになるであろう宮崎旅行の一部に抱き込むことにしよう。

 噴煙を吐き出す桜島が、目の前に迫っていた。






特攻の街 TOP 火を吹く島、再び








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