僥倖

 前回の高知旅行では、それが純粋な鈍行旅と言うこともあったが、阿波池田から高知までは随分と距離があったような気がする。それが今回はどうだろう。想像していた以上に速やかに、高知入りが果たせた。もっとも、三好市の辺りから高知まで、地図上では大した距離がないのは明白なのだから、鈍行列車の場合は、あまり速度を出していないのに加え、行き違いのためかなりの時間をロスしていたということなのかもしれない。が、記憶は定かではない。

 もう一つ、こちらは明らかに記憶違いではすまない前回旅行との相違があった。高知駅が、すっかり新しくなっているのだ。確かにこの間来た時は駅の改築工事中だったのだけれど、それにしてもえらい変りようである。もっとも、高知駅の旧駅舎は、「本当にこれが県庁所在地の駅か?」というなりをしていたため、考えようによってはやっとそれらしくなったと言えるのかもしれない。

 この生まれ変わった高知駅で、宿毛方面へと向かう列車への乗継が発生するのだけれど、待ち時間は十数分あった。そしてそれは甚だ突発的なものだったが、この待ち時間の間に済ませておきたい用事が出来た。高知駅に入る直前、車窓からケーズデンキの店舗が見えたのだが、ここでデジカメ用のバッテリーを買いたい。

 実はこの旅に前後して、デジカメのバッテリーの寿命が、いよいよ尽きようとしていたのである。いくら充電しても、全く持久力がない。なら出かける前に予備バッテリーを買っておけば良いような物だが、旅行直前になって名古屋市内の有名どころの家電量販店を回ってみても、私が持っているカメラに適合する型のものがなかった。取り寄せをすればその限りではなかったが、肝心の旅行日程には間に合いそうになかった。

 それで結局、ヘタリかけの電池と共に旅に出たのだが、もしかするとここ高知で、新しい電池を入手できるかもしれない。そういう思いでケーズデンキに駆け込むと、なんと言う僥倖か、欲していたバッテリーがあるではないか。そこで、否やもなしにこれを購入する。高知駅での待ち時間は、買い物をするにはややせわしなくなる長さだったが、どうにか目標の列車に乗り遅れることもなく、宿毛行きの列車に乗ることが出来た。目的地となる中村駅は、3セク線である土佐くろしお鉄道の駅ながら、JRの特急が乗り入れている駅である。

 鉄道の車窓から見る高知の平野というのは、もう一つ変化に欠け、正直言って面白味がない。尖った田舎でも、もちろん尖った大都会でもなく、自然にしろ人工物にしろ、特に珍奇なものがあるというわけでもない。やや退屈な旅路だが、2時間弱をそんな車中で過ごした。






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