なにわのことも

 計画では、今日のうちに高知から大阪まで移動することになっているのだが、さて、ここからが難問である。高知と香川を結ぶ土讃線は、18きっぷを利用可能な普通列車の本数が極端に少ない。ならば途中で特急なり新幹線なりを利用するべきかと考えていたのだが、前日に特急利用を乱発し、当初の予定よりも出費がかさんでいたこともあって、大阪までは在来線利用に徹することにした。が、そうした場合、高知から大阪までは8時間程度の道のりになる。当然、あまり県内観光に時間をかけられなくなる。その結果、13時を少し回ったところと言う、かなり早い時間のうちに、車を返却。前回訪問時から面目を一新した高知駅でお土産を買ったりしながら阿波池田行きの鈍行を待つ。

 前回、4年前、春先とは言え冷え込みのきつい、小さな旧駅舎でムーンライト高知を待った時の高知駅には、独立した待合室はもちろん、まともな待合スペースなどは無かった。質素で小さなな駅舎の片隅に、余り座り心地の良くないベンチが据えられており、お土産売り場もキヨスクに毛の生えた程度のものしかなく、また駅の反対側への通り抜けも出来なかった記憶がある。当時を思えば随分と変わったものである。高知駅の旧駅舎は、およそ県庁所在地の玄関口とは思えなかったが、この新しい駅舎はまずそれらしい。一方で、あの時頼ったムーンライト高知は、この春をもって廃止になっている。4年と言う歳月は、多くの物事を変容させるのに十分な時間らしい。

 その4年前に分かっていたことだが、高知から阿波池田に向かう土讃線普通は、対向車待ちや後発特急待ちのために、近在の駅で10分以上も停車することが頻繁にあり、走行速度の遅さばかりによるものではなく、非常に鈍い路線である。特急が1時間で進むような距離を2時間半もかけて走る。

 途中の車中では、多少なりとも中国・四国地方にちなんだものをと言うことで、「悪霊島」を読んでいたのだが、琴平の駅を過ぎた辺りで上巻を読み終えてしまった。となれば下巻が気になるのが人情と言うものだが、持参してきたのは上巻だけだった、この後、岡山駅で下巻を探そうとしたのがアダとなり、姫路行きの列車に乗り遅れてしまった。18きっぷ旅を繰り返すうちに痛感したことだが、岡山から姫路までの移動は少々難がある。一本列車に乗り遅れると、しばらくの間、次を待たなければならない。もちろん土讃線ほどではないのだが、今日の宿が地理不案内の大阪であることを考えれば、なるべく早く大阪入りしたい気持ちがある。そこで、やむを得ず姫路までは新幹線を利用することにした。在来線で1時間半ほどかかる距離だが、のぞみなら30分とかからず行ける。

 なお、岡山の書店では、「悪霊島」を手に入れることは出来なかった。「八つ墓村」「犬神家の一族」程度しか置いていなかった。「八つ墓村」はともかく、「犬神家」よりは「獄門島」を置いといた方が岡山らしいとも思うのだが。

 かくて、むしろ当初の予定よりも早い時間に姫路駅へ到着。ここからはタイミング次第では米原まで直通の新快速列車が走っていたりして、少なくとも列車本数の少なさと移動速度の鈍さに悩まされることはない。私が乗り込んだ新快速列車はまっしぐらに大阪を目指した。

 大阪の夜は、グランドサウナ心斎橋で明かした。大阪の地理は良く分からないのだが、時折耳にする「なんば」と呼ばれるエリアに隣接する地域が心斎橋らしい。もしかすると地元大阪人はなんばと心斎橋をあえて区別はしないのかもしれないが、二つのエリアの間に流れているのが、有名な道頓堀川で、二つのエリアを貫く目抜き通りが、これまた有名な御堂筋である。地下鉄御堂筋線で、大阪駅地下の梅田駅から、なんば駅まで移動したのは良いものの、結局道に迷い、その最中にはこれも良く知られているグリコの看板を目撃する機会にも恵まれた。

 一度は全く正反対の方向に歩いたりもしながら、ようやく地図上での自分の位置を確認できた後は、たまたま目にした餃子の王将で夕食とした。共に関西と言うことで、京都の夜の過ごし方と同じ様なパターンである。なお、グランドサウナ心斎橋は、広島の宿にすることが多いグランドサウナ広島の系列店で、内容は広島と似通っているのだが、屋外風呂こそあれ、広島の屋上にあるような変わり風呂がないのは物足りなかった。






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