2013年の冬旅後半戦において、京都が中軸となる方針は早くから決まっていた。と同時に、1泊2日をかけて京都市内を観光することがないだろうこともまた、最初からわかっていた。普通に行けば、初日に関西圏もしくは岡山程度までを行動範囲とし、夜には京都まで引き返して、翌朝から京都市内観光を始める方針に落ち着くところだが、岡山周辺では既に持ち弾がなくなっていた。岡山県内の名のある城はおおよそ回りつくしているし、他の史跡をはじめ観光地も似たようなものである。そこで白羽の矢を立てたのが、高野山だった。
高野山も未訪の地ではなかったのだけれど、年末のこの時期にそこを訪れて、厳粛な気持ちに浸ろうかと言う気になった。何となく熊野古道方面の印象が強いのだけれど、高野山はユネスコの世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の一部に指定されている。前回訪問時、特にその奥の院周辺を包む空気の幽玄なことに、感化されたこともあった。
高野山は、和歌山県内でも比較的北寄りの場所に位置している。鉄道で行く高野山は、南海電鉄の利用が必須となる。最低でもJR和歌山線との接続箇所となる橋本駅から先は南海電鉄線を利用するよりないのだが、18きっぷの効用を最大限活用しようとして橋本駅まで行くのも簡単ではない。関西線を使い、奈良経由と言うのが思ったより時間を食うのだ。結局、いつも関西・山陽方面を目指す場合と同様、大阪まで東海道線を使い、大阪環状線を経由して、新今宮から南海線に入ることになった。
ムーンライトながらを除いて、最も早い列車で名古屋駅を発つ。地下鉄がまだ動いていなかったので、自転車で名古屋駅へ走った。大阪駅に着いたのは、8時を少し回ったタイミングのことだった。ここから高野山までが意外と遠く、鉄道の終わりとなる極楽橋駅に着いたのはそれから2時間ほども後のこと。最後は7分あまりをかけ、急斜面をケーブルカーで登る。車中居合わせた家族連れの父親が、「昔の人はこんな急なところを登っていたのか」と感想を漏らしていたが、それほど急傾斜のところを登っていく。もっとも、おそらくケーブルカーが走っているのは、古来の参詣道ではあるまい。また、同じ人物は「コンゴウナントカデラ」としきりに繰り返していたが、歴史の教科書に出てくるほどの有名寺院を知らずしてこの地にやってくる人もいるものらしい。
|
|
|