愛欲の世界

 京都でのねぐらは、いつも三条大橋付近であるため、行動範囲もそれに引きずられ、東山・祇園界隈となることが多い。今回も、勝手知ったる東山に後ろ髪を引かれる思いがしたが、あえてもっと北のほうを攻めてみようと言う気になった。大徳寺に始まり、仁和寺に向かって歩くコースだ。

 地下鉄烏丸線を北大路駅まで進む。いつもは烏丸御池駅で東西線に乗り換えるので、いまだかつて進入したことのないエリアなのだけれど、途中に鞍馬口駅なんて言うのがある当り、いかにも北のほうに進んでいる感じはする。と言っても、車窓から見えるのは、名古屋の地下鉄と大差ない、コンクリート打ちっぱなしの壁だけである。

 京都の地下鉄も萌え電車路線に進んでいるのか、「地下鉄に乗るっ」とのコピーが付された女子高生キャラクターのポスターが貼られていた。彼女は、太秦萌さんというらしい。松本の渕東さんとはまた萌えベクトルが違うが、最近になってリメイクされ、垢抜けたと評判のようである。ちなみに、同一人物なのかどうか良く分からないが、アップデート前と思しき駅員バージョン(?)の方が妙に艶めかしいのが印象的だった。まあ、話題性では名古屋のハッチーも負けてないけどな!彼女が登場するトラフィカ京カードというのは、今はなきユリカのようなものらしい。ちなみに、京都市営地下鉄でもマナカを使うことができた。情報として知ってはいても、実際試してみるとちょっとした感動がある。

 北大路駅の地上部は、あまりにも地味な住宅街だった。名古屋の地下鉄駅は、大抵幹線道路沿いに作られており、それらとは明らかに異質な雰囲気である。問題は、これほど特徴の無い街区から、最初の目的地となる紫式部の墓まで行き着くのが厳しそうな点だ。大人しく、スマホのナビ機能を使うことにする。GPSを使用しているとバッテリーの消耗が早いため、充電のしにくい旅先では諸刃の剣となる機能だが、前回の九州からバッテリーチャージャーを持参しているため、1泊程度の旅行ならナビでもポコパンでも使いたい放題である。

 最初に目指す紫式部の墓は、島津製作所の近くにあるという。地名で言うと紫野ということになり、いかにも彼女のゆかりを思わせる場所だ。さらにその近くには、小野篁の墓もある。愛欲の物語を著した紫式部は、死後は地獄行きの恐れがあったのだけれど、あの世で仕事をしていた篁の顔で、閻魔大王に口を利いてもらおうというような発想からきているらしい。これも多分参り墓で、近代の感覚で言えば、墓と言うより供養塔だろう。

 ナビがなければたどり着けないような場所、というか、当然ながらナビには墓の位置も表示されていなかったので、結局は見つけられなかったのだが、どうも墓そのもののあるのが工場の一角のような場所らしく、年末を迎え、おそらく会社が休みに入ってしまったであろうタイミングで訪問して、たどり着けた場所であるかどうかは定かではない。






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