春と城

 始発で名古屋を発った場合、広島着は14時過ぎの事になる。途中の兵庫県西部から岡山県は電車の流れが悪く、正直言ってこの区間に関しては新幹線で移動するという選択肢が現実的だ。もちろん最初からずっと在来線新幹線で行った方が絶対的に早く移動できるのだけれど、京都から姫路あたりまでは新快速でかなり速やかに移動できるため、やはり新幹線の効用を最大限に享受するならば岡山横断だろう。どういうわけか、このあたりには各駅停車の列車しか走っていないらしい。しかも18きっぷのシーズンだと、特に岡山までは列車のキャパシティが不足して通勤電車のような満員ぶりになる。つまり、座れない。そればかりか非常に窮屈な思いを強いられる。岡山まで来るとそれまでの乗客が山陽道西進組と四国渡海組、さらには中国山地越えの山陰組に分かれるためか、混雑の度合いだけはかなり改善される。ちなみに名古屋発鈍行日帰り旅行の西限は岡山だと思うが、つまるところは岡山近隣の鉄道事情のせいである。

 岡山を出て倉敷を過ぎ、金光教の本部がある金光町を過ぎ、カブトガニで知られる笠岡市も過ぎて広島県に入ると、最初の目的地である福山城は間もなくである。福山城は、新幹線も停まるJR福山駅の目の前にあるお城だ。在来線からはさほどでもないが、かなり高い位置にある新幹線のホームからだと、再建された天守閣が良く見えるのではないだろうか。どうも福山駅は旧福山城の城地に建設されたもののようである。

 ともあれ改札を出て、駅の北口から城を目指す。駅舎を一歩出ると、前方左手にはお城の高い石垣が迫っていて、本当に目と鼻の先と言う印象だ。左写真の右側に見える石垣はもちろん福山城のそれだが、左手に見える建物は、ちょっとそれらしく見えない写り方をしているが、福山駅の高架だ。両者の間に横たわる道は、写真から分かるように大した広さではない。駅と城がいかに接近しているかわかっていただけるだろうか。

 この石垣伝いに駅出口から見て左方向へ歩いていくと長い石段があって、ここを上ると福山城の本丸に入れる。ちょうど桜のシーズンで、場内には花見の宴席を設ける福山市民の姿が目立った。復元天守は本丸広場の一番奥手にあり、なかなかの威容を誇っている。入場料は大人200円で、中は博物館になっている。入場料が安価に設定されているだけあって(?)、展示品の中に特に目を見張るほどのものはないが、最上階からの眺めは良い。一通り見学を終えて出口に向かうと、職員と不審な中年男の押し問答の現場に出くわした。おそらく城の中に迷い込んだ酔っ払いだったのだろうが、こういう光景を見ると興をそがれる。酒は飲んでも飲まれるな、だ。

 福山市は意外と東西に長い広島県でも最も東に位置している。福山を出ると映画でその町並みが紹介された尾道に入り、鉄道軌道は瀬戸内海沿いへ。車窓から船のドックを見、しまなみ海道の本州側玄関口である向島との間の海峡を見る。海峡の、特に狭いものを瀬戸と言うのだそうだが、尾道市の本土と向島に挟まれた海域はさしずめ瀬戸内海の中の瀬戸と言ったところか。普通の旅行者ならば尾道観光もするのだろが、私にはあまり時間がない。先を急いで尾道を素通りすると、列車は海と山の際を走りぬけ、三原市の臨海部を通り過ぎていく。三原から先、線路は山間部に入り、途中には明日の立ち寄り先の一つである新高山城の看板も見える。この山を抜けたところが広島市で、広島の人口稠密地帯を走り続けているうちに、宮島口の駅に到着。時刻は15時30分過ぎ。






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