■DATA
　経路
　　初日：名古屋　→　（新幹線利用）　→　新大阪　→　（地下鉄・バス利用）→　大阪南港　→ （フェリー利用） →　宮崎

　　2日目：宮崎県内　（レンタカー利用）　宮崎　→　（特急利用）　→　鹿児島中央

　　3日目：鹿児島中央-川内　→　（肥薩おれんじ鉄道利用）　→ 川内-田原坂　→　田原坂-長崎
　　3日目通常運賃（JR在来線のみ）：5560円

　　4日目：長崎-浦上　→　浦上‐大村　→ 大村-博多　→　博多　→　（新幹線利用）　→名古屋
　　4日目通常運賃（JR在来線のみ）：3570円

　JR在来線のみ通常時運賃総額（3･4日目）：9130円(途中下車を利用しない場合)

　18きっぷで賄えなかった交通費
　　大阪市交通局運賃：370円
　　宮崎カーフェリー運賃：（えらべる倶楽部特典利用）：10340円
　　レンタカー代金：5250円
　　肥薩おれんじ鉄道乗車券：2000円（18きっぷ連動企画のおれんじ18フリーきっぷ購入）
　　東海道新幹線乗車券＋新幹線特急券：5670円
　　山陽・東海道新幹線乗車券＋新幹線特急券：17020円


　海行かば

　どうにかこうにか下見旅行も終え、実際に宮崎への旅に出たのは、春分の日を間近に控えた2012年の3月17日のことである。本来バスに比べると割高になるフェリー旅だったが、職場で入っている「えらべる倶楽部」の会員割引を利用したため、価格面で夜行バスと張り合える程度に安価になった。乗船場所が大阪南港なので、そこまでの交通費を捻出しなければならないのが難なのと、夕方には大阪南港に着いていなければならないため、仕事が終わってから新幹線を利用して大阪まで行かなければならないのは大変なのだけれど。
　大阪市営四つ橋線の北加賀屋駅まで行って、そこから路線バスで南港を目指す。が、土地勘のない大都会での移動は、思ったよりも手ごわかった。一度は間違ってかもめフェリーターミナルまで行かない路線に乗ってしまったし、そもそも大阪駅から四つ橋線西梅田駅まで行く経路が、相変わらず分かりづらかった。東京とは比べ物にならないほど案内表示の類が少ない。もともと二駅の距離がかなり近いためというのもあるが、この辺りは泣き所だ。どうも梅田駅や京都駅からかもめフェリーターミナルまでの直通バスがあるようなので、次があるならこれを活用したい。

　どうも思ったよりも苦労しながら乗船にこぎつけたが、フェリーそのものの居住性は、ホテルと同程度とまでは言い難いものの、一応、カプセルホテル水準の個人スペースは確保できるし（今回は2等寝台利用。それ以下のランクに落とすと広間で雑魚寝）、風呂も使える。レストランでのビュッフェ形式の夕食（要別料金）は、専門店ほどのグレードの料理が出るわけではないが、ちょっとした客船クルーズのようで面白い。
　今回に特有の問題は、どこかの学校の学生の集団とかち合ったため、彼らが何かにつけて騒々しかったのと、空調の効き過ぎた船内が半裸で寝ても暑いほどだったこと、未明から船体が良く揺れた事か。特に揺れについては、こんな巨大な鉄の塊が、ここまで揺れるかというほど揺れた。沈没を心配するほどではないが、何しろ船内を歩いていて、一度などは尻餅をついた。船内アナウンスで「現在船体が動揺している」とまで言わしめるほどの揺れ、良くこの航路を利用しているらしい人の言を借りれば「波頭は立っていないが、うねりが大きい」という海原を行った。が、外海とはこういうものなのかもしれない。私のこれまでのフェリー乗船経験は、前述した宮島航路や錦江湾を別にすれば、伊良湖と師崎・鳥羽間の往来程度のものだ。いずれも三河湾口、伊勢湾口の、いわば内海を行くような航海だが、宮崎カーフェリーは紀伊水道を太平洋側に抜け、黒潮の上を進んでいく。

　なお、大阪から宮崎を目指す場合、黒潮の流れに逆らう形の航海になるため、逆の場合に比べて所要時間が長くなる。航行速度は、あまり体感的な単位ではないが、30ノット弱程度、時速にして50km/hほどらしく、漠然と想像していたよりは早い船足と言う気もする。

　ちなみに、それだけ揺れたので、さすがに吐き気を催しかけたのだが、横になって目を閉じていると、以外に耐えられるというのが発見である。それにしても、波形の関係なのだろうが、時々船底が岩礁にでも乗り上げたような、そのうち船体がぽっきり折れるのではないかと思うような、独特の衝撃音が混じるのには気が気ではなかったが。

　そう言えば、ちょうど今回の旅の慰めに「坂の上の雲」を持っていったのだけれど、船上で読んだのが、日本海海戦とかで艦艇がぼんぼこ沈んでいく、船旅で読むには幸先の悪いくだりで無くてよかった。乃木希典が、旅順要塞に手を焼いているうちに、私の航海は終わりを迎えた。





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