相生飛ばし

 8月18日早朝。名古屋駅に着くなり旅行者と思しき外国人カップルに道を聞かれる。形は私とそんなには違わない。明らかに貧乏旅行者である。彼らは、どうやらマックかバーガーキングに行きたいらしい。駅周辺にはバーガーキングこそないが、マックは4、5箇所ある。それは良いのだけれど、この時間に開いているマックがあっただろうか?そこが甚だ疑問であった。名古屋駅周辺は、渋谷とかの盛り場とはまた訳が違う。何しろまだ5時を少し過ぎただけの時間なのだ。海の向こうのマックでは、この時間から開いているのが当たり前なのか?まあ日本でも吉野家は24時間営業のところも多いから、そういうものなのかもしれない。

 名古屋駅を通過して大垣へと向うムーンライトながらに乗り込む。以前の経験から豊橋-大垣間は指定券が不要だと分かっていた。事前に念のため駅員に確認してみたところ、確かにその通りだとの答え。ところが、いざ乗り込んでみるとどうも様子がおかしい。車内アナウンスでは指定席券が必要だと言っている。通りかかった車掌に聞いて分かった事だが、今乗っているムーンライトは臨時増発車両なので普段とは事情が違うのだそうだ。名古屋から大垣までは距離が近いし、立ち乗りならば…とお目こぼしをもらえそうだったが、東京行きの時に指定券なしの乗客に内心散々毒づいてしまった手前、一応切符を購入。結局はずっとデッキに立っていたのだけれど。居心地の悪さを抱えたまま大垣駅に到着すると、ホームには十数人の警官が待ち構えていた。一瞬「よもや…」と思ったが、どうにか手が後ろに回ることなく、米原に向う列車に乗り換えることが出来た。この列車の着時間があまりにも早いため、普段の大垣乗換えのような混乱も発生しなかった。それにしてもあの警官群が一体なんだったのかは分からずじまいだった。

 どうも幸先の悪いスタートだったが、呆れるほど早出した甲斐があって、9:17分には姫路に到着。これすなはち、前日夜にムーンライトながらで東京を発てば、翌日の9時過ぎには姫路まで進めることを意味する。やはり何気ないダイヤ編成においてさえ、東京人向けの便宜が図られていると言うことなのだろう。

 姫路から先、岡山までは新幹線で移動。いつもなら歩みののろい鈍行に、すし詰め状態で揺られていく区間だが新幹線なら30分だ。在来線に比べて二周りほど広い車内。今日は普通の休日のはずだが乗客も少なく、車内がとても広々と感じられる。缶コーヒーを飲みながらあたりの様子を見渡していると、自分が特権階級になったかのような錯覚に陥る。新幹線の、グリーンでもなんでもない自由席に乗っただけで気分に浸れるのだから、安い特権階級である。

 新幹線は、速く、静かだ。滑空するかのように走り、30分ほどで岡山駅に到着。途中に相生駅を経由して二駅。鈍行なら1時間以上を要する区間だったが、今回の新幹線移動はここまででお終い。これだけのことに3000円を投入することになった。安いのか、高いのか。

 岡山から先は伯備線に入り、備中高梁まで1時間弱の移動である。すでにホームに入っていた新見行きのローカル線は、先ほどの新幹線とはうって変わって、なかなかの混みようだ。進む先が山間部なので乗客もまばらなワンマン列車を想像していたのだが、どうやらそうではないらしい。列車は9:53に岡山を出て、倉敷を通り過ぎ、次第に岡山県北・中国山地の南端部へと入り込んでいくが、相変わらず車内にはそこそこ乗客の姿が目に付く。私が高梁駅で降りた時も、車内にはまだまだ人が残っていた。と言うより、乗客のかなりの部分が高梁のさらに先を目指していたと見るべきか。この先にあるのはこの列車の終着駅・新見駅である。この区間は往復で二度通ることになったが、どうやら岡山と新見の間には、結構人の行き来がありそうだ。

 反面で、新見から先、鳥取方面に向う区間は往来も少ないのか、列車本数が極端に少なく設定されており、ここが今回の旅のボトルネックになるであろうことは計画段階から予想されていた。備中高梁での行動時間は1時間30分を確保していた。いや、列車の乗りつきの都合上それより早くも遅くもできなかったと言うのが正しい。特に、これ以上後の時間の鈍行を捕まえようとすると、今日の最終目的地である松江への着時間が、数時間も遅くなる。とは言え、1時間30分で山城を見て帰ってくるというのもなかなか厳しい。ぎりぎりの線になりそうだ。






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