いつもと違う秋

 青春18きっぷの発売回数は年に3回。すなはち、春、夏、冬である。秋だけは発売されない。これは、18きっぷがもともと、学生の鉄道利用が減る長期休暇シーズンに合わせ、これによって減る売り上げの補填をも睨んで発売された企画きっぷだったことに関係しているのだと言う。ただ、その代わり、例年10月には、鉄道の日記念JR全線乗り放題きっぷというのが発売されている。

 しかし今年、2012年秋には、従来の鉄道の日記念JR全線乗り放題きっぷに代わって、新たな乗り放題きっぷが登場した。その名も、秋の乗り放題パスと言う。基本ルールは概ね、従来の18きっぷおよび鉄道の日記念きっぷを踏襲しているが、大きな変更点が二つほどある。

 第一に、使用回数全3回は鉄道の日記念きっぷそのままに、販売価格が7500円に値下げされている。1回あたりの値段は2500円ということになる。18きっぷよりは割高だが、従来の鉄道の日記念きっぷのそれが3000円強だったことを思えば、乗り放題負けしにくくなっているとは言える。

 問題はもう一つの変更だ。乗り放題の効力が続くのは連続する三日に限定される。10月は体育の日があるため、来年以降も同じ乗り放題パスが発売され続けるとすれば、設定期間中に必ず一度は三連休が発生することになるので、ここが一つの使いどころとなるとは思うが、はっきり言って取り回しは悪くなる。18きっぷやこれまでの鉄道の日記念きっぷであれば、1枚のきっぷで複数回旅行することが可能だったが、有効期間を連続三日に限定されると、それが少々難しくなる。

 他、利用対象期間が鉄道の日記念きっぷよりも長めに取られているなどの違いがある。ともあれ、企画きっぷの旅人が体育の日前後に集中する傾向が強まり、それ以外の週末の混雑傾向が若干緩和されるのではないかと、そんなところは考えられる。乗り放題きっぷのシーズン中、大垣駅や米原駅で我勝ちにホームを疾駆する乗客の群れには少々辟易させられるので、それが少しでも減ってくれたら、うれしい気がする。

 そうして迎えた乗り放題パスの発売日。駅などでの告知ポスターの掲出状況は18きっぷ並みである。ややマイナーな存在だった鉄道の日記念きっぷに比べれば露出は多いのだが、ネット界隈での評判はもう一つ芳しくない。発売前から、連続三日間と言う使い方しか出来ない点に否定的な意見が集中していたが、いざ現物を買おうとすると、窓口で使用日を聞かれ、発行されたきっぷを手にしてれば、きっぷそのものに使用可能な三日間が印字される形式になっている。つまり、従来の様にとりあえず買うだけ買っておき、期間中で都合がつきそうな任意の三日間を見つけて…というような使い方はできない。旅に出られるのが確定的に明らかになってから購入しないと、使いどころを逸する危険性がある。

 前述したとおり、発売しなければ季節ごとの売り上げの目減りを補填できなくなる18きっぷの場合と違い、鉄道の日記念きっぷから秋の乗り放題パスへのラインというのは、顧客サービスとしての色彩が強いものと思われる。JRにとって、これが売れるのが得なのか、売らない方が得なのか。良く分からないが、乗り放題系の企画きっぷの廃止に向けた試金石となる動きなのではないかと、勘ぐる向きもあるようだ。

 ともあれ、来年以降もこの時期このスタイルのきっぷの販売が続くとして、一般には体育の日が絡む三連休が第一の使いどころということになるだろう。かく言う私は、1枚が安くなったのをいいことに2セットを買い、1回目はこのカレンダーどおりの三連休というタイミングで旅に出ることにした。






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