■DATA
 経路
  前夜:名古屋-東京(夜行バス利用)

  1日目:東京‐蘇我‐木更津‐久留里 → 久留里‐木更津‐千葉‐佐倉 → 佐倉‐千葉‐錦糸町‐秋葉原 → 秋葉原‐小金井‐宇都宮
  18きっぷ利用区間運賃:5690円

  2日目:宇都宮‐日光 → 日光‐宇都宮‐小山‐友部‐水戸 → 水戸‐上野‐東京 → 東京‐京都(新幹線利用)
  18きっぷ利用区間運賃:5470円

  3日目:京都‐奈良 → 奈良‐京都‐名古屋
  18きっぷ利用区間運賃:3870円

 18きっぷで賄えなかった交通費
  前夜 夜行バス乗車券:6300円
  2日目 東京‐京都:10900円(乗車券:7980円、新幹線特急券:2920円)
  3日目 路線バス運賃:500円


 東京は後戻りしない

 東京と地方を結ぶ夜行バス路線が、全国で一体どれほどの数になるのか、想像もできないのだけれど、それは間違いなく名古屋にも存在している。私のバス旅行では、JRバスを使ったり、名鉄バスを使ったり、目的地にあわせて適宜バス会社も使い分けているが、その両者ともが、東京行きの便を擁している。

 しかしながら、これまで私が18きっぷ旅の一部として東京を目指した中で、夜行バスを使った実績はない。最近では季節ものになってはしまったが、依然として東京行きの夜行快速「ムーンライトながら」が走っているためだ。指定席券が、夜行バスとは比べ物にならないプラチナチケットになりがちだという難点はあるが、18きっぷ+510円で東京まで行ける安価さも手伝って、普通はこれを使うようにしている。しかし今回、バスで東京を目指すことにしてみたのは、実に他愛無い理由からだ。

 うちの近所、玄関を出て1分か2分ほども歩いたところに、東京行きバスのバス停が存在している。JR高速バスのバス停なのだが、前々から気になる存在ではあったので、これを使って関東方面に出かけてみることにした。

 名鉄バスの場合は、名鉄バスセンターと新宿を結ぶ路線が存在しているが、これに対するJRバスは、名古屋駅のバスターミナルと東京駅の八重洲口をつなぐ形になっている。夜行便に限らず、1日中ひっきりなしにバスが往復しているほどの状況で、こと夜行バスに限っては、4系統の便が存在しているようだ。すなはち、ドリームなごや号、レディースドリームなごや号、そして青春ドリームなごや号、青春レディースドリームなごや号である。単純に言ってしまえば、レディース系統が女性専用車両、青春系統が青春18きっぷとコンセプトを同じくする(?)廉価版、青春レディースは名前そのまま、派生系統の混成である。青春系統にはどうやら、運賃が安くなる分、オリジナルドリームが3列シートであるのに対して、4列シートになったりする違いがあるらしい。

 名古屋から東京まで、高速道路を行った場合、普通に行けば4時間から5時間ほどの道のりとなる。夜通し走るには少し短い距離であるため、ドリーム名古屋号の出発時間は、私がこれまで利用して来たあらゆる夜行バスの中でも最も遅く、23時を回った頃に名古屋駅を発つ。これが自宅近くのバス停まで来る頃には、日付も変わろうかと言う時間になっている。ここが曲者である。

 テレビで「ベンジャミン・バトン」を見ながら時間を待つ。はじめのうちこそ「これは楽で良い」などと思っていたのだが、映画の佳境が過ぎる頃になると、眠気を催してきた。ことによると、まさかの寝過ごしという事故が発生する恐れが出てきたのだ。辛うじて、完全に眠りに落ちる前に家を出たのだけれど、自宅近くまでバスが来ているというのも、良し悪しである。

 さて、問題のバス停まで出てみると、すでに乗客と思しき十数人の男女が集まっている。出かけてみれば私以外に乗客がいないということもあるのではないかと心配していたのだけれど、そんなことはなかった。それどころか、バス待ちの客は、最終的に20人以上を数えるに至った。バス停自体は比較的地味な造作であるため、見ようによっては、普通の歩道に人があふれる、異様な光景である。毎夜、私が健やかに眠っている頃、そこからさほど離れてもいない東山通り沿いが、このようなことになっていたとは。

 バスは、定刻より十数分遅れて到着。この時間の名古屋市内を走り抜けてきたバスが、名古屋駅からここへ来るまでの間にこれほど大きく遅れると言うのは解せないが、全車が団子状態になってやって来た所を見ると、各停留所での旅客の積み込みに時間を取られたものかもしれない。

 私が乗ったのは、各種派生便を含めた中でも、基本となるドリーム名古屋号である。ただし、ドリーム号単独で2台立てになっているらしく、そのうちの2号車の方であった。車内に乗り込むと、ダブルデッカーのバスになっており、私の座席は2階にあった。一応は、進行方向に向かって右窓側A列、中央B列、左窓側C列の3列シートになっている。これ自体は標準的な夜行バスの仕様と言え、結構なことだ。しかし、私の座席は左窓側C列の席だったのだけれど、これが良くなかった。実は、乗客の前後移動に用いられる通路部分は、A列とB列の間に設けられており、C列への移動には、どうしても一度は、B列の乗客の前を横切らなければならないのである。で、その座席の前後間隔は、人一人が普通に座るに支障ない程度の広さしかなく、すでに人がいる座席の前を通ろうとなると、どうしてもB列の乗客の協力を求めなければならない。今までに私が使ってきた夜行バスというのは、いつもこんな調子だったのだろうか。どうもそうは思えないのだが、よくよく考えると、予約タイミングの早さもあってか、私はいつも条件の良い右側列に座っていたような気がする。

 さて、このB列の客と言うのが問題で、生活に疲れた神経質そうなおばさんやら、まさに大虎と言う風情のおっさんやら、お願いをしにくい面子が揃い揃っている。おまけに、彼らはすでに就寝タイムに入っており、下手に声をかけようものなら愚痴の一つも聞かされそうで、できれば係わり合いになりたくない。結局、一番人の良さそうなサラリーマン風の男性に頼んで、道を開けてもらったが、この調子では、夜中に催したりすると厄介なことになりそうだ。

 バスは、名古屋ICから東名高速に乗るまでの間、何度か乗客のピックアップをしたようではあるが、遅い時間帯と言うこともあってか、車内アナウンスらしいアナウンスはほとんどない。遮光カーテンによって、現在車が置かれている状況が全く分からないだけに心細いところがあるが、途中の休憩時間についてだけは、その都度、ちょっとしたお知らせがあった。最初車に乗った段階で、休憩場所と告げられたのは、三ケ日と足柄SAだったが、三ケ日と言うのは、どうやら言葉のあやから浜名湖SAをそのように表現したのではなく、本当に三ケ日IC近くの車両基地か何かのようだ。さらに夢うつつに気づいたところでは、乗客向けの休憩以外に、乗務員の交代目的で、静岡ICかどこかでも一度高速を降り、停車していた気がする。

 全く幸いなことだったのだけれど、夜中に小用に立たなければならない事態になるようなことはなかった。ドリームがナイトメアになることもなく、バスは東京に到着したのだった。







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