西へ東へ

 飫肥城まで制覇したら、後は鹿児島市まで戻らなければならない。今日の夜には宮崎市に入るつもりなので、日南まで来ていながらもう一度鹿児島へと戻るのは大変な不合理なのだが、借りたものは返さなければならない。世の中にはレンタカーの乗り捨てというシステムも存在しているようなのだけれど。

 カーナビの目的地として、鹿児島中央駅前のトヨタレンタをセット。すると、あろうことかナビがとんでもないルートをはじき出した。ここから宮崎道に入り、韓国岳の北側を回って九州道に合流させようとする。多分、最短時間で鹿児島に向かおうとするとこういうコースになるのだろうが、距離的には100km近くの回り道になる。もちろん、100km高速を走るのには余計な出費を伴うことになる。仕方がないので、東九州自動車道の西端・末吉財部ICを経由地に指定したところ、ようやく常識的なルートを割り出してくれた。…なんだ、時間にしたって韓国岳迂回ルートと20分も変わらないではないか。危うく無駄遣いさせられるところだった。

 日南から国道222号線を快走。山は多いがずんずん先へと進める。今日一日ずっとこんな調子だが、交通量もごく少ない上に信号がほとんどないので移動のスムーズなことと言ったらない。あまりに快適に走れるため、地元の車は少なからずカーブの連続する山岳路であっても爆走している。経験の差や車の性能差もある。うっかりあんな走りに付き合ったら大変である。剣呑、剣呑。

 途中都城市内で国道10号に入り、さらに進んで東九州自動車道の入口に到着。ここまでがすでに自動車道並だったのだけれど、ここから先は正真正銘の自動車専用道路なのでさらに進捗は稼げる。あれよあれよと言う間に、昨日空港バスに揺られて通った加治木ジャンクションを通過。いろいろあった鹿児島の旅もそろそろ終わろうとしている。少し感傷的になり、そこからさらに進んだ桜島SAで小休止。思えば鹿児島県内最初の立ち寄り先・剱ノ岡はここからわずか2kmほど南西にあった。

 桜島SAから鹿児島中央駅までは一気に走り去った。まだ日のあるうちに中央駅にまで戻ることが出来、まずは一安心と言ったところである。ここからは、青春18きっぷを使って宮崎駅まで移動する。鹿児島中央‐宮崎間はかなりの距離があり、直通列車は日に数本と言った状況なのだが、そのうちの一本の発車時刻が近づいている。ちなみに運賃に関しては、18きっぷ利用で辛うじて元が取れる距離と言ったところ。

 当初の予定では21:11に鹿児島中央を発って23:40に宮崎に着く列車に乗ろうと考えていたのだが、日中の予定をスムーズに消化できたのでそれよりも随分早い列車で移動できることになった。鹿児島中央18:41発に乗り込む。予定が2時間半前倒しになる形だ。とは言え、さすがに3月の日はとっぷりと暮れ、窓の外は闇また闇である。風景を眺めて旅の慰めにするわけにも行かなくなったので持参した本を読んで暇を潰した。持ってきた本が、九州旅行だと言うのになぜか「秋田殺人事件」。もともと読みかけだったのと、あまりの長征だったのとで途中で読了してしまい、途中で旅行ガイドを繰ったりもした。今回携行したガイドは、付録地図に案外とたくさんの城跡情報が載っていて、今回は縁がなかった、あるいはなさそうだが、興味を引かれる城跡をいくつか見つけた。竜虎城とか、どんな城なのだろう。

 さすがに暇をもてあましたところで宮崎駅に到着。列車を降りてみると、寒い。気温が下がってきているのもあるが、県庁所在地だというのに活気に欠ける。天孫降臨の地らしく、そういった趣の看板がある辺りは宮崎らしいのだが、この人気の少なさは嫌な予感がする。

 宮崎での宿は、ネットで調べてマリーノヴァというカプセルホテルを予定していた。夕飯は、同店の近場で済ますつもりでいたのだけれど、宮崎の街というか、宮崎駅からマリーノヴァまでの道は全くの無味乾燥で、地方の中核都市らしい盛り場めいた雰囲気が全くないばかりか、ファミレス・ファストーフード店の類も皆無であった。これではどこで何を食べれば良いのか。途方にくれているうちにマリーノヴァに到着。仕方がないので中で何か食べようか。

 ところがこのマリーノヴァ、大都市によくあるサウナ兼カプセルホテルと言う業態の店とは少々趣が異なっていた。どちらかというと、普通のビジネスホテル+カプセルホテルという取り合わせである。そのおかげで従業員の接客態度は良かったのだが(この種の店でシステムの説明を受けたのはここがはじめてである)、全体にレクリエーションの要素は乏しく、終電に乗り遅れた酔客相手に一通りの飲食コーナーを備えていると言う雰囲気でもない。バーみたいなものはあったが、まともな飯は期待薄だったので、仕方なく今日の夕飯はあきらめることにした。考えてみれば夕飯どころか、昨夜の鹿児島ラーメンからまともな食事を取っていないではないか。とほほ。






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