薩摩の味わい

 桜島フェリーは、鹿児島市街側から桜島に渡るにせよ、その逆であるにせよ、桜島側の港にある料金所で乗船料を払うシステムらしい。通算三度目にして今更ながらの発見をしながら、薩摩半島側に渡ったのが18時過ぎ。慣れない街の市街地走行に手間取り、何とか車を返すことが出来たのは19時近く。鹿児島中央駅付近には、トヨタレンタカーの店舗が新幹線口と桜島口の二箇所にあるようだが、以前から営業している桜島口側の店舗は、目と鼻の先にガソリンスタンドがあるのが助かる。

 今日の宿は、まだ決めていない。何かと出費のかさむ旅なので、初めての鹿児島旅行の時のように、エクセルサウナタイセイを利用するという手もある。意外にも施設内のレストランで食べた揚げたてと思われるさつま揚げが美味だったのに感動させられたことが思い出されるが、一方で睡眠のための環境が余り快適でなかったことも思い出された。前者はともかく、後者は余り記憶が定かではない。しかし、昨日と同じく、落ち着いて地震の報道を見たいとも思う。被災地を遠く離れた鹿児島にいると実感も薄いのだが、何しろ今は非常時だし、交通障害という形で、自分がいつその非常事態のあおりを受けるかも分からない。言い訳がましい気がしないでもない。しかし、そんなことを考えて、とりあえず今夜も普通のビジネスホテルに泊まることにした。

 ホテルを探して駅を突っ切り新幹線口に抜ける。街中に出ても良かったのだが、何となく新幹線口近くの方がリーズナブルなホテルがありそうな気がした。期待したのは、高知で利用したスーパーホテルやルートインの線だったのだが、どうもこの界隈には、JRホテルをはじめ、わりと高級なホテルが多そうだ。その中で、もっともランクが落ちると思われたのが、東横インである。これもまた、全国至る所にあるビジネスホテルだ。今回も新規店舗開拓のつもりでここに泊まってみようか。

 そう考え、シングルの空き部屋があるかとフロントで聞いてみたところ、泊まれるという返答。価格帯としてはやや高めだが、会員登録すると今後の利用も含めてお得になると乗せられ、登録をすることに。この際、会員カード用の写真を撮ることになったが、翌日出来上がったカードには、間抜け面の薄汚い男が佇んでいた。こんなことならもう少し身奇麗にしておくべきだった。

 この系列は、過去にホテル内の設備について味噌がついたことがあったが、このとき泊まった室内は広く、建物自体の新しさもあって小奇麗だった。翌朝は無料朝食付きだったが、同じ無料朝食でも、ルートインはもとより、スーパーホテルよりも若干落ちる気がする。まあ、朝食にはそれほどこだわりがないので良いが。

 朝食よりもまずは夕食なのだが、昨日と同じくアミュプラザの地下に潜る事にする。何か、鹿児島ラーメン以外で鹿児島らしいものを。鹿児島を良く知らない観光客向けに、夢を見せてくれる店はないか。たとえそれが事実鹿児島の郷土料理などではないにしても、いかにも鹿児島らしいと思える、ステレオタイプの料理はないか。アミュプラザにある店は、いずれも鹿児島の老舗には違いがなさそうだが、とは言え鹿児島で昔から親しまれてきた洋食屋というのは何か違うし、鹿児島黒豚のトンカツ屋というのもピンと来ない。天文館むじゃきだって食事はあるようなのだが、白熊のイメージが強すぎて、名古屋で言うすがきやに相当するポジションなのではないかと思われ、もう一つ踏み込めない。ふらふらと、またしてもざぼんラーメンに引き寄せられそうになったが、結局その対面辺りで営業しているそば茶屋吹上庵に入ることにした。悩んだ挙句これというのが、果たして鹿児島らしいチョイスだったかと言えば甚だ疑問だが、鹿児島ではそれなりに知られた蕎麦屋の系列らしく、今日も県内を走っている中で何軒かを見かけている。やっぱりそばが好き。

 オーダーしたのは黒豚板そば。鴨せいろの黒豚版みたいなそばだが、板そばというのは、中京地区ではあまり聞かない。確かに、蕎麦の上には刻み海苔の代わりに板海苔が乗っていたが、そういうことではないのだろう。後から調べたところでは、山形地方にはそういうものがあって、そばを載せる器が板や板様のものであるから、そう呼ばれているらしい。多くの場合、かなりボリュームのあるものらしいが、吹上庵の板そばも、確かに一人前にしては食べでがあるものだった。

 さつま揚げでも、黒豚の持つ味わいを最大限に生かした料理でもなかったけれど、そばから得られた確かな満足を胸に、ホテルへと戻った。






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