香港大晦日

Hong Kong

 下山後、バスで港まで移動。ホテルは九龍半島側にあるので再び海を渡る必要があるのだけれど、帰りはバスではなくスターフェリーでの九龍湾渡海となる。慌しくツアー旅行をしていたので今一つその実感が無かったのだが、この日が大晦日だった事もあり、夜ともなれば街中に人があふれかえる事が予想され、市内中心部は一切の自動車の通行が禁止されてバスが使えなくなるため、九龍側の港から今晩泊まるホテルまで歩く事になっていたのだ。それも旅行会社側が前々から想定していた行動と言うわけではないらしく、その日の日中に慌しく決まった感のある動きだった。どうも香港当局による道路通行止めは日本のそれとは様子が異なり、当日の交通状況を見ながら裁量的に判断して適宜行われるものらしい。フレキシブルと言えばフレキシブルなのだが、かっちりした予定が事前に立てられていないと言うのは足止めを喰らう側にしてみれば何となく釈然としないものを感じる。私が日本人だからだろうか。

 フェリーを降りると港の周辺はおびただしい数の人で埋め尽くされていた。イルミネーション、排気ガス、そしてあふれる人、人、人である。東京でもこんなひどい状況になる事はあるまい。香港と言えどやはり人余り大国中国の一部には違いないのだ。普段は高層マンションで垂直的に暮らしている人たちが同一平面上にあふれ出したがゆえの異常事態なのだろう。どうやらカウントダウンイベントか何かが行われるようだ。それにしてもせいぜい中学生ぐらいにしか見えない子供の数が多い。大人の姿がないこともないが、いてもほとんど子供連れだ。少子化が進み子供の姿がどんどん減っている日本とは対照的だけれど、考えようによってはこれは脅威なのかもしれない。

 文字通り立錐の余地も無くなった香港のベイエリアを、人波にもまれるようにして進んでいく。人垣に阻まれて一向にペースは上がらない。今夜泊まるホテルはインターコンチネンタルグランドスタンフォードホテル。舌をかみそうに長ったらしい名前のホテルだ。普段ならフェリーの発着場所から歩いて20分ほどの距離らしい。ところがガイドさんの試算によれば、今日ばかりは30分40分ほどは見ておかなければならないだろうと言うこと。実際に歩いてみると、確かにそれほどの時間はかかった。ホテル周りの混雑はそれほどでもなかったが、まったく海外に出ると日本の常識では測れないことが起こるものだ。呆れるを通り越して感心する。

 部屋は、同道したメンバー全員が同じフロアになるように部屋を取れなかった事に対する旅行会社の配慮により、スイートルームが用意されていた。ここで再び強調しておきたいのだが、今回の旅行に関して私は一銭の金も払っていない。そんな男がスイートに泊まって良いのか、そのうち天罰でも下るのではないかととても申し訳のない気分になる。今の今までスイートルームのスイートは"sweet"だと思っていたような男がスイートに泊まって良いものか。部屋の入り口には"suit"の金文字が燦然と輝いている。とにかく非常にいたたまれない。同じルームナンバーの室内には、普段私が暮らしているワンルームよりも広い部屋が2部屋。要するにリビングとベッドルームと言うことらしい。トイレ、テレビも二つ備えている。ベッドはキングサイズが一つで、風呂はもちろん大理石張りのジャグジーだ。バスルームでさえ私の住まいより広いというのは、哀しいではないか。

 えらい事になってしまったと茫然自失していたが、横になっているうちに泥のような眠気が襲ってきた。消え行く意識の中、遠くで人びとがカウントダウンをしているのは聞こえてくる。10あたりからだんだんと減っていったそのナンバーは、程なくして0になった。群衆の嬌声が聞こえてくる。どうやら2007年が明けたらしい。

 なお、このインターコンチスタンフォードホテルは漢字表記すると「海景嘉福酒店」となる。夢のスイートルームから見える景色は、向かいのビルと真下の通りだけであった。ということは……皆まで言うまい。




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